山

大台ヶ原

山行きの日

2008年11月22日(土)

目的

今シーズン初の霧氷

コース

駐車場(09:30)－展望台(10:30)－日出ヶ岳(10:05)

尾鷲辻(11:00)－尾鷲古道散策－駐車場(12:45）

メンバー

単独

 

『お父ちゃん三連休やんなぁ～久しぶりに山連れてってぇ♪』

そろそろ冬眠モードの鬼ヨメが木曜日の夜に突然そんなことを言い出す

私としては、すでに山頂は真っ白だと言われている弥山に行きたかったのだが、鬼ヨメが歩けるだろうか？

『ちょっと雪あるらしいけど弥山に行こか？』

『お父ちゃん、私を殺そう思ぅてるやろ･･･大台ヶ原でエエやん大台ヶ原で･･･』

ガクッ

ま、行者還林道はもう少し先まで通行できるし、大台ヶ原は来週でドライブウェイ閉鎖だからいいか

ところが当日の朝、前日実家を往復したりでバタバタして疲れた鬼ヨメは起き出さない

しめしめ･･･　　『行ってきまぁーっす』

小声でそろそろと家を抜け出した私の頭はもう白銀の八方睨でいっぱいだ（笑）

ところが･･･

 

国道168号を南下すると、川上村の交通情報案内板には

天川・洞川方面凍結　チェーン必要

ガァーン、あの急勾配の行者還林道が凍結だとまずムリだろう、どうするか？

しかたないな、大台ヶ原でいいか、きっと霧氷が着いているだろう！

 

大台ヶ原へ続くドライブウェイからは大普賢岳が怖いほど美しい

しかし、路面は凍ってもっと怖い（笑）小処温泉の分岐前後には乗り捨てたと思われる車があちこちに･･･

４WDに乗り換えた私には、その実力を試すにはいい機会だ、行ける所まで行こう！

 

恐る恐るのドライブは無事駐車場まで･･･眩いばかりの青空が私を急かす、さぁ歩こう！

ビジターセンター前は積雪に足跡

もう何人かのハイカーは歩き始めているようだ

 

今年の2月末、私は単独で冬季閉鎖されたドライブウェイを歩き、この駐車場でビバーグしたのだ

あの日以来の雪の遊歩道だ、といってもあの日は積雪で遊歩道なんて見えもしなかったのだが

厳冬の雪を思い出しながら歩いていると、前方から下山する人が、こっちへ向かって来る

もう下山かぁ、よほど早くから歩かれたんだろうな、って思ってすれ違おうとした瞬間

『あ、Wolfgangさん！』

 

 

突然声をかけられたWolfさん、まるで鳩が豆鉄砲状態、しばし見つめ合う男達（笑

『スロトレさん？今日は奥さんとじゃないんですか？』

起き出さないので、こっそり出てきたとは言えず、ごにょごにょと濁す

Wolfさんはドライブウェイの凍結で、車を置いて歩いている途中で親切な方に乗せて頂いたそうだ

なので、今日はゆっくりとドライブウェイを歩いて帰られるとのこと

偶然の出会いに二人で笑いあった

 

 

■10時05分：日出ヶ岳

 

展望台では尾鷲港が遠くまで見渡せる

あまりの陽射しの強さに霧氷は消え去りそうだ

あぁ、あの2月と同じ青空だ

弥山方向は山頂部分が真っ白だ、雪の奥駈道はいいだろうなぁ

白い階段を進むと日出ヶ岳山頂だ

日出ヶ岳山頂には数人のハイカーしかいない、こんなステキな青空なのにな

きっとドライブウェイの凍結で諦めた人も多いのだろう

正木峠は稜線の北側だけ雪が残る、まるで雪でラインを引いたようだ

ずっとこんな景色を眺めていると、空の青さに目が痛くなるほどだ

でも、それは贅沢な痛みなんだろうな

大峰山系をバックに佇む

空はどこまでも・・・

どこまでも青い

正木峠に向かって木製階段を進むと、早くも霧氷ははらはらと舞い落ちてゆく

このはかなさ、この季節ならではのものだ

立ち枯れの向こうに冠雪の大峰

青空と霧氷、今日はこれでいいか、もう充分だな、この先は雪も無いし

今年最後の大台ヶ原を独りっきり、青空に心を奪われる

 

■11時00分：尾鷲辻

 

東屋から中道で駐車場へ戻ろう、と思っていたが、ここであることを思い出す

以前から歩きたかった尾鷲古道だ、この東屋から南へ行く道が、尾鷲へと続く古道なのだ

ちょいとだけ覗いてるか（真っ直ぐ帰れない性分なのだ）

何と、残雪にトレースがあるじゃないか･･･どこまで行くのか着いて行こう

あれ？トレースはどう考えても森の中へ道なきところを進むぞ、と足元を見ると杭と工具が･･･

森を整備されてる方のトレースだったようだ、うーんん、どうしよっか？

勘頼りで南へと下ると、いかにも古道らしき道に出た、あ、きっとこれだぞ

そして倒木を越え、赤テープに従うとフラットな場所に出る、きっとここが堂倉山だろう

さぁ、マップも無いし、東屋へ帰ろうか･･･うん？私はどこから来たんだっけ（笑

東屋の方向は分かるが歩いてきた足取りが見えない、きょろきょろしていると･･･

 

『おーい、お兄さぁーん、どこへ行くのー』

突然上の方から大きな声が聞こえ腰を抜かすほど驚く！森を整備されてる方だった

『はぁ、東屋に戻るつもりなんですけど･･･』

『ほらほら、そこ斜め後ろ、上の方に自分の足跡あるやろ』

･･･あ、あった

『先週も行方不明が出て、まだ見つかってないよ～気を付けて！』

いや、あの、方向はね、分かってるんですよ、東屋もね、きっとあっちでしょ？

ただね、自分の足跡がね･･･いや、ホント、ね。声にならない独り言をブツブツこぼしながら引き返す（笑

 

そういえばビジターセンターにも遭難者のポスターが貼られていたな

大台ヶ原と言えどなめてはいけない！

東屋に戻ると、ジーンズにスニーカー、Pコート姿の若者が食事中で、私の出現に驚く

『そ、そんなところにも道あるんですか？』

尾鷲古道のことを話すと、和歌山から写真を撮りに来たと云う若者も興味津々だ

『でもね、分かりにくくて遭難する人もいるから、安易に入り込んだら危ないよ！』

（自分のことは、きっちり棚に上げるのだ･･･）

まだ12時過ぎか、このまま帰るのもなぁ、と、ちょっと彷徨うことにする

（とにかく、真っ直ぐ帰れない性分なのだ、ってか、懲りてないのだ）

ある処から沢へ降りるために道なき道を下って行く

大台ヶ原の沢にも興味があったのだ

マップは持っていないが、確かYの形に二俣だったはずだ、その分岐辺りまで歩いてみよう

誰も居ない森の中、残雪の岩を掴みながら沢に沿って歩く、記憶通り二俣となっていた

その分岐には深い淵があり、水は驚くほどエメラルドグリーン、さすが大台ヶ原の水だな

 

沢沿いに生々しいシカの死体を見たので水を飲むのは躊躇われる

水に手をやると、想像通りの冷たさだ

この水が東ノ滝に落ち込み中ノ滝と交わって、大蛇嵓の下を流れる東ノ川となる

そして、いくつもの貯水池を経由して熊野灘へと繋がる、その水の長い長い旅路に思いを馳せる

 

 

二俣の左手を沢伝いに戻る、急になだらかな地形になったと思うと歩道はすぐそこだった

『こ、こんなところにも道があるんですか？』

突然の声に振り返ると先ほどの和歌山から来た若者だった

『ここもね、一歩間違えると遭難だから！安易に入り込むと危ないよ！』

（人には何とでも云えるのだ･･･）

 

 

その若者も車をドライブウェイに乗り捨てたらしいので、そこまで送ることにした

写真だけが趣味で、仕事も写真関係についたその若者

『いつか屋久島の写真を撮ることが夢なんです、絶対行きます！』

運転しながらも若者の力強い言葉が何故か耳に心地良い、若いっていいな

 

若者を下ろしてドライブウェイを進むと、のんびり歩かれているWolfgangさんを発見（笑

もうすぐそこだから、と遠慮されるWolfさんに無理やり乗って頂く

『天気もいいし、大普賢岳見ながら歩くものいいでしょ？』

にこやかに頷くだけのWolfさん、どうやらお疲れの様子、いいことは無かったようだ（笑

 

 

透き抜ける青空の下の霧氷、今年最後の大台ヶ原は目に痛い青さが残った一日だった

今シーズンも雪に閉ざされたこの山を歩きたいな

いつもの大普賢岳ウォッチ場所で車を止め、ぼんやりと雪山を想っていると

和歌山の青年がフォンを軽く鳴らして通り過ぎて行った

もう台高山系も冬支度だ

 

 

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