二つ目の壁は狭い狭いバンドからどうにか手がかりを探った

もう引き返したら？いやいや、だって稜線はもうすぐだぞ？

二人の自分の葛藤

三つ目の壁は手がかりも無く一瞬躊躇する、が、もう引き返せない

左手のハイマツ群に逃げ込みヤブを漕ぐが、なかなか進まない

見たことも無いほど大きなハイマツが隙間無く密集しているのだ

時間を確認すると・・・なんだ？90分もかかってるのか！？

振り返ると三俣山荘が視線と同じ高さに見える、黒部川は遥か足元を流れてる

ヤバいよな？これはヤバいよな？

でも稜線はそこなのだ、えぇーい、とハイマツのブッシュに無理矢理突っ込んで行く

溺れてる、いつの間にかハイマツの海に溺れ、身動きがとれなくなってる

しばしハイマツに絡まれたまま空を見上げる、黒部川越しには笠ヶ岳

あぁ〜ぁ、このまま出れなくなると、これも遭難だよなぁ・・・

こんなしてられないっ！

まるで、そうしないと息が出来ないかのように、目の前の枝を無理矢理避ける

跳ね返った太い枝で頭から顔を叩かれる

痛い

頭がふらつく

視線が定まらない

左のコンタクトが飛んでいる

痛みで目が覚めた