冷蔵庫に固まってたスキヤキの残り物牛肉、鬼ヨメに内緒で持ってきて

麺つゆでしゃぶしゃぶっとして、卵でとじて、っと

『お父ちゃん、手際良過ぎるわ。なんで、こんなテキトーに作ったんが、こんな美味しいんやろか？』

テキトーは余計だぞ

昨日と同じように夕暮れの風もなく、まったりとまったりと時間が流れる

今日は日曜日、テン場は更に閑散として寂しいくらい

『お父ちゃん、もうお腹いっぱいやわ〜』

ん？お前がいぱい食べると思って、あと炭火焼き地鶏とオイルサーディンがあるぞ

『あらまっ！地鶏あるん？そりゃいっとかなぁアカンなぁ♪』

結局食べるのだ

いい加減酔っ払って来たぞ

えーっと、ヒュッテで生ビア２杯だろ？

でもって、今空き缶が・・・まぁいいか。いくらでも飲めるほど美味しいもんな

ほろ酔いで、夕陽に染まり始めた立山を見上げながら、歩けなかった稜線に思いを馳せる

『お父ちゃん？ホンマは、もっと歩けたはずやのに、とか思ぅてるやろ』

へ？あ、ん、いや、そんなこと無いぞ？

『ウソや！分かってるねん、私が腰イタイ言うたときも怒ってたはずや！』

なんだ？絡み酒か？

『どーせ、いっつも独りでガツガツ歩いてんねやろ？時間とかばっか気にして、ろくに休憩もせずに』

うっ。

『この前の連休だって、何やのんアレ？シャツからズボンから、ガビガビやったで？アレは松脂やろ！』

あ、黒部のハイマツの海で溺れたの、ばれてたのか・・・

『腕とか足とか、引っ掻きキズだらけやったし、ザックもキズだらけやったで？』

・・・はぁ、全部お見通しなのね

『独りでどんなとこ行って、何やってんのんか知らんけど、無茶もしてんねやろ？』

・・・はい。

『な？たまには、こんなんもエエやろ？な。』

・・・はい。

『だって最高やんかぁ、二人で、こんなキレイな景色見て、ゆぅ〜っくり、美味しいビア飲めたら』

・・・そうだな。うん、その通りだ

『だいたい、お父ちゃんはなぁ〜』

あぁ、いつまで続くのだ