秋の庭 ・ 明神平
台高山系・明神平
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秋だ 狂おしいほど北アルプスが恋しい夏山シーズンが終わると 胸にぽっかりと穴が開いたような消失感
その穴を埋めてくれるのは紅葉の台高山系 そんな流れがこの3年ほど続いている
そんなときに訪れるのはいつもの山 明神平だ 何だか、この落ち葉に埋もれた小怪を歩かないと 秋を感じることができない、そんな気がする枯葉色の小怪
つづら折れを過ぎると明神平 東屋で一息入れると三つ塚分岐からトラバース 我々以外に誰も居ない森を進む
出足からはっきりしなかった天気 ヒキウス平と桧塚を見渡せるいつもの場所ではガス 午後から晴れるとの予報は外れそう
どんどん湧き上がるガスに隠れてゆく桧塚奥峰 今日はダメだな なんて言いながらも、ガスに煙る秋の庭の姿に見入る
笹の海を掻き分ける、サクサク、さわさわ掻き分ける ”2年前の青空と奥峰の姿が忘れられませんね” そんな会話に、いつの間にか山友との繋がりも月日を重ねてることに気付く
重い雲の隙間から一瞬の光 その光が、秋の庭を輝かせる
桧塚まで歩こうか、奥峰までにしようか なんだかなぁ、もう、どうでもいいか
ほら、また雲が厚くなった もう、一瞬の輝きも期待できないだろう 今日は帰ろう
枯葉の海を泳ぐ、さわさわ泳ぐ これから独り、誰も居ないであろう森の中でテン泊する友と分かれる その後姿から伺える、不安と期待が好ましい
この静かで赤く燃える森で独りテン泊か･･･ ”Ｔさん、なんや、ちょっと不安そうやったな” そんな不安もいいものですよ ”せやな。エエもんや”
明神平へ戻ると少し青空が覗く その青空の下、団体さんが早くも酔っ払ってる様子 Ｔさん、離れて正解だったよ、こんなに騒がしいと、ソロテン泊が台無しだ
東屋でコーヒーを二人で分け合って頂く 前山から下って来られた老年のソロハイカー 東屋に座り込むと、おもむろにザックから取り出したのはハーモニカ
♪雪よ 岩よ 我らが宿り 俺たちゃあ 町には 住めない からに♪ 暮れなずむ明神平に、少し枯れた雪山賛歌のメロディが響き渡る なんとも嬉しい演出に去りがたくなる
いつもの山 いつもの秋 今年も還って来たよ
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