昨晩体調不良で先に休んだメンバーも起き出し、もう大丈夫だから予定通り行こうと･･･

朝から下山と全員で決めた告げると、なんともやるせない表情

じゃ、みんな行って来て、ここで待ってるからと･･･

気持ちは分かる、痛いほど分かる、誰だって同じことを言うだろう

でも我々は一つのパーティ、行くも残るも全員一緒だ

じゃ、2〜30分歩いて展望を少しだけ楽しんで下山しましょ

簡単な朝食の後、奥駈の森を眩いばかりの朝陽が照らす中歩き出す

やっと出番のスノーシュー、昨晩舞い降りたヴァージンスノーを踏みつける

氷華のトンネルを抜けるとクリスタルブルー、思わず大声を上げる

青空来たぁー！

ほら、こうして皆で笑ってると、輝く青空もどんどん透き通って行く

皆一緒で良かった。良かった。

大普賢岳、行者還岳、稲村ヶ岳、大峯の連峰が手に取るように望める

そして

紀伊山地の屋根が連なる遥か、熊野灘が燦燦と輝く奇跡的なシーン

熊野三千六百峰、その全てが見渡せるような、そんな気がした

まだ夜明けの雲海の名残が流れては消えてゆく、その姿に無言で見とれる

さぁ、降りましょう

これ以上いると、もっと登りたくなってしまう

我らが宿である聖宝ノ宿に戻り、最後の缶ビールを回し飲みで乾杯

残った食材も皆で分け合って身を軽くする

スノーテーブルには木漏れ日が射し、まったりとまったりと包み込んでくれる

急ぐ必要も無く、各自思い思いにカメラを手に歩く

誰が言い出した訳でもなく切り株のビューポイントでは腰を下ろして弥山を望む

あのピークからはどんな景色が望めるのだろうか

きっと想いは皆同じ

でも言葉には出さない

いつまでもいつまでも、大きな弥山に身を任せて佇んだ

思う存分弥山に抱かれた後は、白銀の奥駈道をアイゼンで駆って行く

西口に下ると林道は凍結

今回の山行で一番キケンルートは、この凍った林道だった

思わぬ氷瀑に見とれて歩き、何度も転倒するメンバーの絶叫が大峰にこだまする

ラッセルも無く、ピークも踏まず、モンスターに会うことも無かった厳冬期大峰行

それでもいいじゃないか

弥山の懐で眠り

燦燦と輝く熊野灘を望み

暖かな仲間と一緒に踏んだヴァージン・スノー

今回もまた忘れられない山となった